イベント主催の苦悩 自分の苦労も知らないでと思ってしまうワケ

2009/5/26注釈を追加

最近とんでもない頻度で東方オンリーイベントが開催されている。
中には大丈夫なのかと思えるようなイベントもあり、混沌とした状態だ。
だが、彼らにも彼らの事情はある。


半年前になるが世代間断絶の話になったときにちょっとした違和感があった。
同人イベントではすべての人は参加者という建前がある。
だが実際イベントがどのように行われているかについてはブラックボックス化されており
その実態はあまり見えてこない。
これは特に収支報告の点で顕著だ。 つまり運営側はトントンで運営していると言っても
根拠が見えてこないのである。


そこで今回はイベンターさんの話を聞いた中で書ける範囲でかいつまんでイベントで何を想定するのかを
紹介しようと思う。 もちろんこの辺は伝手で聞いたような話だから、あまり過信されても困る。
イベンターさんがどの辺で苦労するのかわかることで、参加者はより参加者たる存在になるのではないかと思う。


イベントの会場を借りるときからイベンターさんの戦いは始まっていると言っていい。
イベントを開催しようという話は割とその場のノリで決まるが、実際開催する場合は事前の段取りが必要だ。
まずイベンターさん各位に連絡を取る。 近辺で大きなイベントはないか、開催して問題ないかを確認するためだ。
この段取りが抜けたために例大祭とかぶってしまって潰れてしまったイベントがある。


イベント会場を借りるためには、知り合いのコネで会場を法人格で借りてくれる人を探す場合が多い。
つまり、イベントでトラブルが起こった場合は名義を貸した人に最終的に迷惑がかかるのだ。
この辺も覚えておいた方が良いことかも知れない。
この段階で想定される入場者数と規模も決まる。 同時に主催さんはイベント開催に必要な人数を集めはじめる。
ここでイベンター各位の連絡が生きてくる。
イベント界隈は一種の相互補助システムで、たとえば昨年の例大祭ではコミケットのスタッフが応援に駆けつけてくれた。
イベントにおいてはやはり経験がものをいう。 経験者が列整理するだけで効率は数倍になる。


一方で主催さんは告知のためのチラシを絵描きさんに頼むことになる。
自分で書ければいいのだろうが、もちろん原稿料も発生する。 また刷るための費用も発生する。
ここから主催さんの営業活動が始まる。 各種イベントに出向いてチラシを撒くのである。
これもイベンターさんへの根回し、周知の為である。*1


一方で、イベント開催に当たってもう一カ所行かないと行けない場所がある。
それが警察署だ。 これもイベント開催が決まったときに同時進行で行う。
あまり想定したくないが徹夜組などによる迷惑行為を考えないといけない。*2


イベント告知用ホームページやオンライン受付も同時進行で始まる。
このとき、様々な環境を用意してデバックが必要となる。
財務書類を用意してサークルスペース代をプールする必要もある。
サークルの案内状も必要となる。 これも経験者が居ると案内状の文言も洗練されるようになる。


ここでようやくカタログの準備となる。 サークル配置先も決める必要があり、それは経験と勘がものをいう。 
カタログの編集も相当時間かかる。 ある程度文言がテンプレ化することが望ましい。
編集作業も規模によるが数週間かかる。 作る方は本一冊作るわけだからとんでもない手間となる。
カタログを通しての啓蒙活動も載せないといけないためそのコストは割高になる。*3
追記:最近カタログの啓蒙部分をきちんと読まない人が増えているという話を聞く。 CD−ROMカタログが殆ど開封されていないという話を聞いている。
   新規参入者にとってはカタログがチケット程度の扱いにしかなっていないのかもしれない。


開催前の事前の打ち合わせをしつつ、各種機材類の準備がいる。当然それを置くスペースもいる
カタログの当日販売分もあって幾つか倉庫なり部屋を借りないといけない。
追記:この点については一部事実誤認 例大祭の場合見本誌などを保管するための場所を借りているとのこと
輸送代もバカにならない。 レンタル代金も洒落にならない額となる。
名札類やパネル類、POP類を作成 救急用具などの準備なども行う。 もちろんここに費用が掛かる
ここで分かると思うのがイベントは会場を借りる費用だけでなく恐ろしく雑費が掛かるのである。
例大祭ではさらに、警備員を雇ったための人件費までかかる。
彼らの打ち合わせのための日数もあるので実際に雇う期間は思った以上に長い。
当然彼らに給料を出すしかない。 恐ろしいことになるだろう。


運営は徹夜組もある程度対処しないといけない。 とある運営さんは前日のパトロールでほとんど一睡も出来なかったと話す。
イベント時にグロッキーになるのはもってのほかだが、そうなるのも当然のことかも知れない。
徹夜組は運営のコスト増加に貢献していることを認識すべきだ。 彼らを取り締まるためにほかの参加者がそれぞれカタログ代の形で
100円位は負担していると考えても良い。 *4


イベントが終われば終わったで打ち上げがある。
これまで参加してくれたスタッフの分ののみ代は払わないといけないだろう。
スタッフの報酬はこれだけである。 本当に割に合わない。
ここまでやって収支計算となるが、結果的に持ち出しの方が増えて痛い目を見るケースが誠に多い。
どうにか黒字に持って行ければいいがその場合は次回にプールされる。
主催さんはほかのイベント関係者に祭り上げられることも多いので(悲惨すぎる)
主催はかなしいかなその手間暇の割に、報酬どころか損をするケースが殆どだ。*5


ここで考えてみよう。
主催側にとって成功とは大きな事件がなく運営できたことを指す。
大きな流れの中では参加者が快適にイベント参加するよりはまず大きな事件が起こらないことが重要となる。
なにしろそうなった場合、イベント開催に当たって名義を貸した法人に迷惑が掛かるだけでなく
同じ会場を借りた別のイベントに迷惑が掛かりイベント界隈から追放の憂き目にあう。
こうなったら二度と主催はできないばかりか長年培ってきたコネまで失うことになる。


だが、実際のところ参加者にとってすれば、費用をかけて手間暇かけて会場に行ったのに満足に物を買うこともできず
サークルと満足に交流できなければ不満がばかりが貯まっていく。 サークル関係者やイベント当事者は自分の苦労を知らないでと
思っているから「お客様意識」の名前でそれらの意見を封殺してしまう。
かくしてそれらとギャップが開くばかりなのだ。 


主催さんがイベンター各位に連絡をとるで分かると思うが、つまるところ主催はイベント関係者とコネがある人物でなくてはいけない。
これがイベント界隈と言われるある種の閉鎖性を生む。
たとえば収支報告ができないのもそのためだ。 収支報告で仮に大きな黒字が出たら、その人物に対する妬みとやっかみが襲いかかってくる。
酷いケースだと内ゲバみたいなことになる。 そういう場面もそこかしこで行われているのが実態だ。
*6


参加者はここまでの事情を知っておく必要があるかは置いておいて、ギリギリの範囲内で書いてみたが
当然もっと想定しないといけないことはあってこれではとてもじゃないが足りないのが実情だ。
同人はいる人みんなが参加者だという建前を貫くならこうした事情はもっと公開されてしかるべきだと思う。
当事者意識を持てと言うならお互いが歩み寄らないと駄目だろう。
誤読している人がいるみたいだからはっきりさせておくけど
運営さんたちは好きでやっているとはいえ大変な思いをしていることは理解して欲しい。

*1:追記:原稿料はボランティアだから支払う義務がないって言うのは結構だがそれを一般化していいものか また、イベント関係者は主催だけでない 周知するには営業活動がいる

*2:やってるイベンターさんやってないイベンターさんあるが、言うと言わないで全然違う

*3:追記:ここでのコストは手間としての人的コストなど 当たり前だがイベントの規模による

*4:追記:もちろんやってないところもある

*5:誤読している人がいるけどスタッフは好きじゃないとやってられない

*6:コネがない状態でもイベントをやれないわけじゃないけど、ノウハウ伝達が出来てないから混乱しやすい