東方儚月抄が迷走しているみたい。

東方儚月抄といえば永夜抄の続きものとして三誌メディアミックスなどという大技で連載している話であることは
今更説明するまでもない。
ところが東方界隈色々見てみると、まるで儚月抄をなかったことにしているような動きが見えてならない。
毎回取り上げているところといえば、無限旋律
さんかチェキ空ブログくらいなものではないだろうか。
東方の新作地霊殿をバンドルしたキャラ☆メルの感想文もろくにアップロードされてない。


その理由は非常に厳しい言い方をすれば、思考停止か見てないふりかそのどちらかだと思う。
儚月抄はとてもクセがある。 一般的な伏線も儚月抄では通用しない。
論理的に考えれば考えるほど破綻する。 
これはポストモダン的な思考の読者、二次創作者にとっては耐え難いのではないかと思う。
東方の作者であるZUN氏を批判してはいけないのなら沈黙するしかない。
それが東方界隈の答えであると思う。


もちろんこのフォーマットはファンタジー小説の文法からすれば正しいものだ。
だけど、ここ数回の儚月抄は仕切り直しをしようとする向きが多々見られる。
バトルものへの移行あたりが好例だろう。 
儚月抄がこれほど妙なことになっているのは三誌合同企画でありながら伏線の張り合いによる
知的パズルではないことにあると思う。
読者が期待していたのはどちらかというと、バトル系か知的ゲーム系かどちらかだったのだろう。
ところが実際のところは、ストーリーが遅々として進まず、いつまでも話が展開しないものだった。
こんな状態でバトルものに移行したところでさらに展開が遅くなって、
最初の話すら忘れてしまうのではないだろうか。


そもそも何故儚月抄はストーリーのセオリーを無視してまで伏線を回収しないのか
小説版、漫画版、4コマ版 そのすべてにおいて説明不足だ。
三つは微妙にリンクしているものの、すべてを説明するには明らかに不足している。
たとえば漫画版12話で女神を封じる祇園様の力と言われても皆がピンとこないのが好例だろう。
しかし用語類を調べることでそれが何を意味しているのかを理解することはできる。
このやり方をやって成功したのは、新世紀エヴァンゲリオンだろう。
このアニメはたくさんの用語やファクターがちりばめられそれらの意味を皆で
調べることでアニメの説明不足を補っていた。
エヴァンゲリオンの時代、各出版社から所謂「謎」本が大量に出版されたこともある。


東方幻想板の儚月抄スレッドを見れば、儚月抄が本当にやりたかったことの一端を
見ることができるだろう。読者が物語を補完するストーリーであることは明らかだ。
作者であるZUN氏がエヴァンゲリオン直撃世代であることも理由の一つだ。
儚月抄は東方でエヴァンゲリオンをやろうとしている。
エヴァンゲリオン儚月抄にはもう一つ共通点がある。
どちらも物語の着地点を決めないままストーリーを進めていることだ。
もし全体的なプロット漬けを徹底的に行っていれば、第一話からいきなり月に攻め込むという
話の前にキャラの紹介話を数話入れるだろうし、攻め込むと決まってからのゆっくりとした
展開にならなかったと考えられる。明らかに行き当たりばったりでストーリーを考えている。
実はエヴァンゲリオンもまた最後の展開を決めないままにアニメをオンエアしてしまった。
この辺の事情は単行本一巻あとがきに書かれている。


もう一つ東方の場合は二次創作で大きくなったことを忘れてはならない。
多分最初の目論見では、説明不足部分に二次創作が入り込んで儚月抄を都度方向転換しようと
考えていたのではないかとも考えられる。
しかし実際は二次創作はあまり盛り上がらず、キャラの記号化はむしろ後発である緋想天や
地霊殿のほうがはるかに進行している。
これはある意味仕方がない。 二次創作者にとってストーリーの展開によっては致命的な
矛盾が生じる所謂賞味期限切れはなんとしても避けたいところだからだ。
説明不足部分は二次創作を招き入れるどころか逆の効果になってしまったといえる。
もちろん世界観を調べ上げてそこから話を構築すれば二次創作は不可能ではないが
現代では、必要なものはキャラクターと劇中での十分な説明というのが実情である。
岡田斗司夫が「オタクは死んだ」と言って話題になったが、世界観を知るために
わざわざ物を調べようと考える人が減ったとも言える。
今の東方ファンにとって儚月抄はハードルが高すぎるのではないだろうか。


いずれにせよこのままでは儚月抄は「なかったこと」にされる可能性が高い。
東方という話題性があり読者も多く見込めながら、今の結果は関係者にとっては
あまり良い結果に見えないのでないだろうか。
私は周囲にもうちょっと儚月抄で遊んでもいいのでないかと言いたい。
そして本編にはもう少し説明量を増やさないといけないと考えるのである。